試合後、イレブンを連れサポーターへ挨拶に行こうとした飯田先輩を呼び止め、後輩のGK白井さんを捕獲し、エルシオコーチや馴染みのスタッフも捕まえていた船山さん。かつてエースナンバーを背負っていた古巣ですから、旧交を温めるのに忙しないのです。
彼の名前は、メインスタンドからも、山雅のコアサポが陣取る南スタンドからも、逆側の北スタンドからも呼ばれ続けていました。片山さんが等々力に続いて誘導した結果、船山さんは山雅サポへ応えるためにアルウィンをほぼ半周しました。 (これでも、Twitterでバクスタにも来てほしかったとレスがつく始末) フロンターレの出張売店に出来た行列が緑色だったり、スタメン発表で大きな拍手を贈られたり、いかに船山さんが山雅で愛されているかを実感した夜になりました。 <J1 2ndステージ第5節@7/29アルウィン> 松本山雅FC 1-3(前半0-3)松本山雅FC 得点者:【川】16分田坂、25分谷口、35分大久保 【松】69分阿部 今回のアルウィンで一番印象に残ったのは、シャトルバスに乗っている時間の長さでした。昨シーズンまで何度かシャトルバスでアルウィンに行っていますが、今季は異なる点があります。自家用車での来場比率を下げるため、松本山雅が多額の予算を組んで無料化したのです。使用される車体も、基本的には路線バスではなく観光バス。乗車時間が長く感じたのは、平日の夕方だったからです。つまり、日常の一端として道路が混んでいる時間帯。昨年経験したナイターは日曜の夜でしたから。 試合は等々力での同カードに引き続き、前半はフロンターレが技量の差でボールを支配。山雅はゴールさえ死守できれば・・・と臨んだようですが、かないませんでした。あれよあれよとフロンターレが3得点。船山さんも珍しく(?!)複数人に囲まれても強引にミドルシュートを狙う場面が複数回見受けられ、アップ時点から分かってましたが、気持ちはとてもよく伝わってきました。残念ながら、58分で杉本さんと交代となってしまいましたが。 ここで集中が切れて、あまりの空腹に耐えかねて食料を調達しに出た私を待っていたのは、大歓声と、それで山雅の得点だと悟った店員さんが仕事を忘れてガッツポーズする姿でした。吉朗先輩はクリアミスを逃しませんでしたね。 後半は押され気味にもなったフロンターレ。結果的に、前後半通して南スタンド寄り=フロンターレサポから遠い場所でボールが動く時間が長くなってしまったのでした。交代選手の出来に風間監督は不満だったようですが、いずれにしてもスコアでは快勝してフロンターレは中断期間を迎えたのでした。 スポンサーサイト
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「あんたが大賞」贈呈式、コアサポーターとのセレブレーション(レナト+杉本さんがカブト虫のかぶりもの着用!)のセレブレーション、後援会員とのハイタッチ―多くの儀式を終えた背番号15が
「裏切ったと言われても仕方がない。何を言われても仕方がないと思っていた」 等々力のアウェー側を緑に染めた山雅サポは、スタメン発表の演出でフロンターレ全選手が映し出されるワンカットの時点で、大きな拍手でした。 <J1第16節@6/20等々力> 川崎フロンターレ 2-0(前半1-0)松本山雅FC 得点者:45分レナト、65分エウシーニョ シュート数や支配率で結果は決まらないとレイソルの大谷さんがツイートしていました。サッカーはゴールの数だけを競うものゆえ、アプローチはさまざま。前半、山雅がほぼ自陣に押し込まれ、チャンスらしいチャンスは一度きりだったとしても、その一度を決めていれば“正解”と採点されるわけです。あの山雅の1トップで船山さんが奮闘していると想像すれば……どれだけストレスフルだろうかと、なかなかボールを保持できないオビナを見て、考えても無駄でしかないifが試合中、幾度も脳裏をちらつきました。 ボールを扱う技術レベルの平均が違うから、必然的に選択肢も戦術以前の時点で変わってしまうのだろう……とか、山雅の頃は運動量でも良く賞賛されていたけれど、今では同じように褒める人はそういないのではなかろうか……とか、意味があるのか怪しい相対比較を繰り返してしまうのは、選手個人にくっついて観戦対象チームを変えているがゆえの悪癖なのかもしれません。そして、動き出しに対してパスをくれる人がいないのは、受け手の問題なのか出し手の問題なのか、とも。 船山さんは山雅だからこそ一層ゴールを欲し、山雅サイドも元10番だからこそ取らせまいと時には3人がかりで囲んでました。大久保裕樹さんと腕で火花を散らしていた際は、腐れ縁?……と思ったり。前半終了間際、ゴールの右、角度のないところへ抜け出した船山さんはフィニッシュを選択しませんでした。中央の、あまり頭では決めていないらしいレナトに浮き球。いや、浮き球にレナトが合わせたと書くべきでしょうか。フロンターレらしい……この日は一段と繋がれ続けたボール回しの果てに、時折やはり強引にシュートまで持っていってしまう大久保嘉人さんとの いずれにしても、いいアシストには違いなく―コーナー付近、少し後ろを向いてのガッツポーズは、何を意識したものだったのか、それとも無意識か。 後半は山雅がボールを持つようになり、その分ゲームが展開される面積は広がり、船山さんの良さはかえって生きるのではないかと感じたのですが、65分のCKから流れたボールをエウシーニョが綺麗に叩き込んで以降は前半のビデオを見るかのようになってしまいました。山雅の目標はトップ15だそうですが、手数は少なかろうと、何本かは繋いで相手ゴール前まで運んで……シュートとまでいかずとも、セットプレー獲得まではいかないと勝ち点3は加算されません。 船山さんもフルタイム出場はならず。憲剛さんが試合後コメントで船山さんにゴールを取らせたかったという発言をされていましたが、その意図は試合中も伝わってきて……船山さんもう少し強引になればいいのに、それができないとは思えないけど、誰かに遠慮してるのかな、と思わずにいられません。ともあれ、1stステージの優勝はレッズとなり、場内アナウンスも次節について「勝って気持ちよくファン感を迎えましょう」と述べたりする有様ですが、個人的には一つの節目を越えたと感じる試合でした。6月も3分の2を消化して、船山さんがいまだ無得点とは予想外の極みですけれども! |
「博多のうどんは、やわやわなんよ」
<J2第15節@5/24レベスタ> アビスパ福岡 1-3(前半0-0)カマタマーレ讃岐 得点者:【福】93分鈴木【讃】51分・73分沼田、95分仲間 太宰府≒九州国立博物館より直行した私が真っ先に飛びついたのは、丸亀市ブースに貼られていた丸亀城のポスターでした。にっかり青江が真っ先に浮かぶあたり、私も審神者(=刀剣乱舞ユーザ)です。うどんが売っていて、つい買ってしまいましたが、今思えば、ご当地以外ではなかなか食べられない福岡のうどんを選べば良かったです。東京で食べられる店は一つ(有楽町・交通会館の地下)しか知らないのに…。前夜、お一人様OKの水炊きを予約満了で逃した結果、空腹に耐えかねて柏ですら食べられる(!)一蘭に行ってしまったのは不覚でした。 MDPでも煽られていたうどん対決。博多のうどんは飲みもののように柔らかく、食べた気はあまりしないのに、おなかはふくれてしまう代物です。一説には、海洋貿易都市・博多(福岡ではなく博多なのに注意)の商人が、食事の時間さえ惜しんだゆえの産物だとか。 もともと雨が濃厚な予報だったので、3,000円するバックスタンドでした。某J1クラブの後援会絡みでJリーグチケットに登録させられてしまったため、ARコードにトライ。購入処理後、メールで分配して(今回は私一人ですが、それでもメールで送らなければならない)ARコード画像をDLし、スタジアム外のテントで発券と手順多めです。 ふくやの明太豆乳クリーミーコロッケをほおばりながら、ゲストで来たNMBのパフォーマンスを眺めました。なぜHKTでないかと言えば、アビスパとは吉本興業繋がりなのだとか(教えていただきました) センターサークルにてスポンサー様の名が入った布を持つお仕事を務める男子たちの熱視線は、遠いスタンドでも分かる程です。1曲歌うと布をわざわざ半周させていた―遠近で不公平にならないように―ので、彼らにとっては大仕事なのでしょう。 カマタマーレは今季初見。J2マガジンで仲間さんとGK清水健太さん(日立台のピアノで同じ時間に食事を取っていたかもしれない程度の間柄)が対談した際、予備知識を得ていなかったら唖然としていたこと間違いなしの、潔いまでに割り切ったサッカーを展開していました。4-5-1の1トップ以外、自陣にべったり引き、両サイドの攻防すら放棄気味。ペナルティエリア内さえ死守すればOKと多人数で体を張り、シュートやラストパスを跳ね返します。 バックラインにプレッシャーがかからない状況でも横にパスを回すだけで外へ流れてしまう場面さえありました。仲間さんのボール扱いも、首をひねりたくなる―技術レベルを維持するのはチームメイトとの練習なのだと個人的には山雅で思い知らされてます―雑なところがあったり。よって、懸命にはじき出したボールを受けて繋ぐ意識は稀薄で、再び攻められては返す…といった調子です。 このやり方を貫き続けることが、選手にとって、あるいは毎試合これを見せられるサポーターにとってどうなのかは、私には何か言う資格はありません。ただ、この割り切ったスタイルだからこそ、結果として“堂々と対峙”できるのも、サッカーという種目の面白さでもあります。 直近11試合負けなしのアビスパ。そのアタックは、前半終了間際、何度も寄せる波のように繰り返されました。中原さんのヘディングがバーを舐めます。 後半、先にゴールを挙げたのはカマタマーレでした。試合前、NMBの花束贈呈で緩んだ表情を場内ビジョン(及びスカパー!の試合中継)に抜かれていた沼田キャプテンです。繰り返しになりますが、サッカーは得点までの経緯やポゼッション率で芸術点が加算されるスポーツではありません。ネットを揺らせば良いのです。 更に、仲間さんがペナルティエリア前で相手から巧みにボールをキープし、うまく後ろへ出したところから沼田さんが放ったミドルでカマタマーレ追加点。それなりにサッカーを見てきて、最も唸らされたカウンターサッカーは、御給さんがいたSAGAWAにRKUがボコボコにされた日の“槍”ですが、このカマタマーレはそれに次ぐ威力に感じました。 カウンターともなれば、自陣深くから長い距離を走らねばならず、必ずしも意図するようなボールが来るとも限らない仲間さんですが、オフェンスの中心としてとても頑張っていました。終盤には、ついにGKと1対1の場面に到達。ここでループを選んだのですが、残念ながらボールはゴールの上にふわりと乗ってしまいました。 ロスタイム、鈴木淳さんの得点に、場内は山笠のリズム―これが快いと感じるあたり経験は消せないと感じる―で盛り上がります。しかし、高橋泰さんの左コーナー付近でのキープを起点に、フリーだった仲間さんが長めのショットを右サイドネットに叩き込み、熱を奪ってしまいました。静まるスタンド、対して仲間さんは右腕で小さなガッツポーズ。鈴木さんが決める直前にも一度単独で抜け出 し、倒されたのですがファウルとはならず、地面を叩いていただけに、私も嬉しかったです。 タイムアップ後も唯一盛り上がる讃岐サポーターの前で、カマタマーレの選手たちはラインダンス。仲間さんはここでも嬉しそうにガッツポーズしていました。引き揚げかけながらも、仲間コールに戻ってきて踊っていたあたり、本当に愛されているのだと嬉しくなりました。 自らの流儀を通し、勝ち点3をつかんだカマタマーレ。日頃、どちらかと言えばボールを支配するサイドで見る時間が長いだけに、妙に鮮烈な後味を残してくれた一戦でした。 |
possessionという単語には、ある考えに支配されること・こびりついた考え・取り付いた感情…といった意味もある。
<ヤマザキナビスコカップ第7節@6/3等々力> 川崎フロンターレ 1-1 ベガルタ仙台 職場の立地条件ゆえ、帰宅する≒日立台へ行くよりも、ずっと早く到着できてしまう等々力。これまでの平日開催は仕事が終わらず断念していたのですが、いざ退社できてしまうと、あまりに所要時間が短くて驚きました。恐るべきは東急東横線の通特。 週末の試合では人が多い+行くのが遅いゆえ使いものにならなかったフロンパークで、初めてカレーライスを買いました。9,523人が動員“少ない”と評されるJ1に通っている事実を、改めて噛みしめました。 フロンターレを見るのは、船山さんの誕生日(5月6日サンフレッチェ戦)以来。直近のエスパルス戦でも2-5と強烈なスコアを刻んだフロンターレは、良くも悪くも1カ月前と同じサッカーを展開していました。 2点取られても3点取れば良いとでも―声高には主張していないとしても―言いたげな“盾”を構えるフロンターレ。突き出す“矛”は、相手ゴールに迫っても更に良い形を狙ってパスを回します。この行為は攻撃ではなく守備だと気づけたのが、この日の収穫でした。攻撃は最大の防御。フロンターレがボールを保持している限り、敵は攻撃できず…少なくともフロンターレが失点する事はありません。 “矛”の先端部分たるアタッカーの中でも、より鋭い一撃を欲して横へ回してしまうのが船山さんで、時には強引にでも刺しに…打ちに行くのが大久保さん。だからこそ、二人が刻んでいる得点数は開いているのでしょう。6月になっても船山さんが無得点のままだと気づいて、愕然としました。 ベガルタの先制点は蜂須賀さんでしたが、むしろ失点した際の悔しそうに二度も地面を叩いた姿が印象的でした。ナビスコカップの予選突破に賭けていたのは、フロンターレのはずなのに。気持ちが面に出るタイプの選手ばかりではないと、大昔とある選手に言われたのを忘れたわけではありませんが、フロンターレのサポーターではない私ですら腑に落ちない戦いぶりで…サポーターを自負する方々は、繰り返されるゲームにどんな感情を抱くのだろうと、他人事ながら気になってしまった夜でもありました。 |
「試合を楽しみながら自分たちのスタイルを出す。簡単なことじゃないが、それが勝ち点3に直結すると思っている」(10/9信濃毎日新聞より)
<J2第35節@10/4味の素フィールド西が丘> 横浜FC 0-2 松本山雅FC 得点者:2分犬飼、31分岩上(直接FK) 西が丘でJリーグを見るのも……Jリーグのチケット発売で朝10時にコンビニで待機したのも初めてでした。私が購入したメインスタンドは試合当日にも空席ありましたけど、アウェー側ゴール裏は入手困難を噂された程でした。 私にとって、西が丘は関東大学1部のチームが試合をする場所(だから、ここ数年はご縁が……)です。船山さんがRKUに在学していた頃も、何度も足を運びました。大学最後の西が丘はインカレの初戦ですが、やはり印象深いのはリーグ戦で優勝を果たし、集合写真の最前で寝転がっていた姿。 あれから5年近く経ちました。飯田さんと時折笑顔をこぼしながらアップする船山さんは、既視感があるようで、全く別のもの。10番のシャツを着た少年の手を引いて最後尾で入場してきた時点で、既に私は胸がいっぱいだったのでした。なぜなら、スタンド半周は緑に染まり(特に山雅のサポーターがいた側のゴール裏は、たくさんの横断幕を張るスポット、というイメージで)高らかにチャントが歌い上げられるから、です。 アルウィンも素敵な専用球技場ですが、西が丘のピッチとの距離はJの標準値を良い意味で逸しています。声が届くという確信は、不思議とスタンドに陣取る者の声を大きくします。アウェー側に割り当てられた方のゴール裏は高さがなく、ほとんどグラウンドレベル。ゆえに、三方を山雅サポーターの熱量に囲まれる(降ってくる、ではなく、包まれる)という、普段では考えられないようなシチュエーションでCKは行われたのでした。 サイドを交換して、山雅のキックオフで試合が始まったので、前半、山雅の攻撃が山雅サポーターの近くで行われる状況を横浜FCが進んでチョイスしたことになります。電光石火の先制弾は、横浜FC守備陣が特異な雰囲気に慣れず、ふわふわしていたしたからこそ生まれたように感じました。これ、サイドを入れ替えなかったらどうなったかな……という疑問には、後藤健生さんのコラムで山口監督が答えていました。 「自分たちが1点リードして後半に入ったとして、そこで相手のサポーターを背にしたくなかった」 このサイド交換、アルウィンでは割と見かける印象があります。山雅に後半、サポーターへ向かっての攻撃をさせない。しかし、9月はゴールをなかなか奪えず、未勝利で終えた山雅にとっては、得意のセットプレーでまず一撃を浴びせられたのは、あまりにも大きな戦果だったのです。2点目も、2人が蹴るフェイクをしてからの、3人目岩上さんの一発。ゴールが決まるたび、サポーターはイレブンの至近でタオルマフラーを振り回し……前半は驚くくらいの山雅ペースで進みました。 佳境に入ってきたリーグ戦、9月の山雅は負傷だ累積だと主力の欠場に悩まされた感もあります。フルメンバーになれば良いサッカーができる、というのは正直褒められる事象ではありませんけれど、見ていて安心できるのも事実。岩沼さんが戻ってきた左サイドは、私の後ろで観戦していたサッカー経験者が唖然とするくらい攻撃主体として偏重利用されていました。 船山さんも岩沼さんと組めば、トリッキーなスルーまで繰り出してくれるんだと改めて感じました。いや、岩沼さんが素因ではなくて、押せ押せのムードが多彩なボールタッチを呼び込んだのかもしれませんが。いずれにせよ、久々に、船山さんの一つ一つのプレーを、楽しく見ることが出来ました。忘れてしまったと思っていたんです。私、船山さんの見せてくれる“意外性”(私なんぞの予測を斜め上に裏切るボールの運び方をすること)に惹かれて、ファンになったんだと。 西が丘は、やはり松本山雅のサポーターを収容するには小さくて、もう至近距離で船山さんのプレーが見たい!―だなんて贅沢の類になるんでしょうけれど、日程の妙でそのチャンスに恵まれたのが言葉にならないくらい嬉しかったです。大学サッカーは関係者と物好きくらいしかギャラリーいませんでしたが、今はあんなにもたくさんのサポーターに応援してもらえる……その勇姿を、同じ場所で見られた幸福に感謝。 |